LiB用ガスケット
車載分野を本格育成
滋賀で量産体制整備
フッ素樹脂成型加工メーカの淀川ヒューテック(大阪府吹田市、小川克己社長)は、リチウムイオン2次電池(LiB)用ガスケットの育成に拍車をかける。車載向け需要を見据えて滋賀第2工場(甲賀市)に総額数十数億円を投じて最新鋭の設備を導入するなど、2~3年以内に量産体制を整える。その一環として、1月末に同工場を増強しており、3月には生産能力を現状比倍増の月産約200万個に引き上げる。2015年度には車載用だけで売上高30億円を目指す。
携帯分野で実績
同社はLiB用ガスケットを半導体製造装置向け部材、薄型パネル製造関連に次ぐ主力事業へと成長させるため、研究開発や営業活動に注力している。LiB用ガスケットは電解液が漏れ出すのを防ぐことができる耐薬品性や耐熱性に優れるシール材。同社は約15年前から携帯電話に使用させるLiB向けのガスケットを手掛けている。累計生産量は10億個を突破しているが、クレームが一切ないなど高い評価を得ている。
熱加工法に強み
同社の強みは製造方法にある。射出成型を用いるのが一般的だが、同社では独自開発した熱加工法と呼ばれる手法で生産する。この製法は原料に通常タイプのPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)高分子量グレードを使えるのが特徴で、同樹脂が本来持つ性能をそのまま発揮させることができる。また、熱を加えたときにシール材がやせることがないため、電解液が漏出する恐れもない。安全性・信頼性・耐久性が求められる自動車に最適な部材として提案しており、ユーザー側で性能評価試験が進んでいる。
10億円超を投資
採用活動と並行して生産体制の整備も急いでいる。 ガスケットの工場は滋賀県と中国・上海市の2ヵ所にあり、滋賀を車載用、上海を携帯電話用にそれぞれ特化させていく。滋賀第2工場では2~3年以内に総額十数億円規模の設備投資を実施する計画で、早期に量産体制を構築する。
同事業の将来性が評価され、経済産業省の低炭素型雇用創出産業立地推進事業に採択された。この補助金を有効活用し、11年度の投資額を予定より増額することを検討している。
※電解液の漏出を防止するガスケット(下の写真)。熱加工法で高い信頼性を発揮する。